老舗を再生させた十三代がどうしても伝えたい
小さな会社の生きる道
著者:中川 淳[中川政七(なかがわ・まさしち)]
※株式会社中川政七商店十三代代表取締役社長
初版発行: 2012年10月1日
発行所: 株式会社CCCメディアハウス
※ Schoo 「できる!デザイン経営塾」▼シーズン2 第7回 「すべてはビジョンからはじまる(ゲスト:中川 政七)」 https://schoo.jp/class/7227/room
※「工芸の再生請負人」の異名を持つ十三代 中川政七氏 オンライン対談 : 十三代 中川政七氏×ファクトリエ代表山田 https://www.youtube.com/watch?v=of31UnhyGqY&t=23s
<ガイヨウ◎ ,マナビ※>
◎ 中川氏のコンサルティングビジネスは、家庭教師に近い。中川氏から発せられた「思い」は、生徒に伝達され、生徒からその仲間たちへ伝達される。全国各地で育った生徒が、自らの「思い」を発信し、サプライチェーンを含む周囲を刺激して、地域産業を活性化させる。ビジネスの手法を指導するだけでなく、「思い」を伝える。そして、世の中に大きな流れをつくり出す。
※ 中川政七商店のホームページを見ると、「日本の工芸を元気にする!」の文字が特大サイズであらわれる。このビジョンから全ての活動が展開されていることがよく分かる。このビジョンをヒントにして、弊所のビジョンである「地域産業に貢献します。」を「地域産業を元気にする!」に変更した。「貢献します」よりも「元気にする」の方が、分かりやすく、「思い」を伝えやすいと思う。
◎ 新ブランドの開発よりも業務改善の方が確実に経営改善に結びつく。まず、決算書を分析して自社の経営状態を正確に把握する必要がある。企画・販売を商売の前輪とし、企画・販売を支える仕組みを商売の後輪としたとき、前輪と後輪のバランスが重要である。
※ 発明相談を受けるとき、特許権の取得と事業計画とが結び付いていないと感じることが多い。特許権の取得には、60万円程度の費用がかかるが、その費用を回収するための事業計画が全く無いことも少なくない。投資 ⇒ 回収 ⇒ 投資 のサイクルが回らなければ、事業を継続できない。
◎ 商品・サービスに対する認知度が低いとき、やるべきことは「営業活動ではなく啓発活動」である。啓発サイトを開設し、そこに興味をもってもらえるようなコンテンツをつくる。自社サイトに向かうリンクを貼れば、潜在顧客を自社サイトに導くことができる。
※ 特許事務所の業務に対する一般人の認知度は極めて低い。そのため、一般人が事業を始めるとき、「商標登録出願をどこに頼めばよいのか分からない」といった事態が生じる。「安いところに頼む」といった選択も一つの考え方ではあるが、将来に向けてブランドを成長させていくためには、知的財産の全般について、気軽に相談できる特許事務所を選択していただきたい。その意義を理解していただくためにも、弊所のやるべきことは「営業活動ではなく啓発活動」であると考える。
◎ 「日本の工芸を元気にする」をビジョンとする中川氏にとって、生徒は工芸というチームの仲間でもある。生徒の活躍は、工芸の発展、ひいては地域産業の活性化につながる。つまり、株式会社中川政七商店において、利益追求、自己実現および社会貢献の3つは、ビジョンによって強固に結合されており、この結合形態を生み出す取り組み、すなわち共通価値の創造(Creating Shared Value; CSV)が競争力の源泉となっている。
※ 「地域産業を元気にする!」をビジョンとする弊所にとって、お客様は、新たな価値を創造するための共創パートナーである。お客様の活躍が、地域産業を元気にする原動力となる。
◎ 会社と顧客との接点や、経営者と社員との接点にビジョンが反映される。ビジョンのもとに良い顧客、良い社員、良いパートナーが集まる。ビジョンに共感した顧客、社員、パートナーは、ビジョンを指針として行動する。社長には、ビジョンに対する熱い「思い」を語り続けることが求められる。分かりにくいビジョンでは、「思い」の熱量を保ち続けることは難しい。考えの浅いビジョンでは、語る言葉に説得力を持たせることができない。自分たちがどうなりたいか、自分たちに何ができるか、自分たちは何をすべか。この3つが重なり合う部分こそがビジョンになり得る。
※ ビジョンを掲げても、その真意が正確に伝わらなければ、効果は得られない。ビジョンの真意を各方面に正確に伝えるためには、広告媒体よりも、自身が発信するホームページ・SNSが適している。広告媒体で商品・サービスを宣伝することは「マーケティング」であり、ホームページ・SNSでビジョンを伝えることは「ブランディング」である。競争力を強化するためには、先ず「ブランディング」に注力する必要がある。